東京ワインコンプレックス(Tokyo Wine Complex)

コルクの話

天然コルクとスクリューキャップの話

ここ数年、天然コルクの使用をやめ、スクリューキャップを採用するワイナリーが急激に増えてきました。ワイン業界において常に激しい論争を繰り広げてきた、このコルク問題を我々も真剣に考えなければならないときが来たようです。

まず、ワインにとってコルクとは何なのでしょうか?答えは一つ。ワインにとって、ただの口栓に過ぎません。ワインの移動を便利にし、飲みたいときには簡単に開けることのできる蓋なのです。この最も重要な役割を果たす口栓の素材として、何百年にも渡りコルク樫の樹皮が使用されてきました。これはコルク樫の樹皮が当時最も柔軟で弾力性に富み、手軽で加工のしやすい素材だったからです。おかげで今では口栓としてだけでなく、コルクがワインの象徴として認知されるまでになりました。

残念ながら天然コルクはワインの汚損を生みます。これはカビによるコルク臭の問題だけでなく、開栓時のコルク屑まで様々です。その内コルク臭の問題ではワイン全体の5〜8%、最も多かった調査結果では13%ものワインに発生していると言われています。コルク臭はワインの風味や果実味を奪いますが、多くの消費者がこのワインの汚損をコルクによるものと判断できないことが、この問題を厄介なものにしています。つまりワインを飲む10人にひとりはカビにより汚損したワインを飲み、その味をワインの持つ本来の味だと判断してしまっているのです。

それはワインの評価を下げ、時には丹精込めて造ったワインが流し台に捨てられてしまうことすらあります。消費者にしてみれば、同じワインを購入したにもかかわらず、運が悪ければひどく汚損したワインを買う羽目になる。一般的な消費者にとってワインを買うことが、まるでギャンブルになってしまう。そしてそのマイナス評価は全て販売者やワイナリーへと向けられるのです。

ワイナリーにしてみれば、コルクの責任で自らのワインの評価が下がるなど、到底受け入れられるはずもありません。また、消費者の受ける不利益も見過ごすことはできません。

近年、天然コルクに代わる多くの口栓が試されています。合成コルクやスクリューキャップがその代表です。それぞれに利点と欠点が指摘されています。欠点は全て消費者も被るリスクであり、なおかつ、ワインを汚損する欠点を持つ口栓は唯一天然コルクのみです。今では様々なタイプの口栓から、スクリューキャップが最良の封印方法と考えられるようになり、多くのワイナリーで採用されるようになりました。口栓先進国のニュージーランドでは2001年には200万本だったスクリューキャップ採用のワインが2004年には一気に5000万本になるといわれています。

それではスクリューキャップがワインにとって本当に最良の口栓なのでしょうか?

コルクが上手に開けられないという話を良く聞きます。慣れてしまえば簡単なことですが、これは特殊な工具(コルク抜き)を必要とし、確かにビギナーには失敗が多いようです。最近はどこの家庭にも簡単なコルク抜きがあるようですが、熟練とかなりの力が必要です。また、アウトドアなどではコルク抜きがなくてワインが開けられなかったなどという悲劇が繰り返されています。その点スクリューキャップはいつでもどこでもワインを楽しむ機会を増やしてくれるものかもしれません。

密閉性についてはどうでしょうか?多くの人が「何十年にも渡る熟成の結果はまだ出ていないのでは?」と考えているようです。これは事実ではありません。ワインの口栓としてスクリューキャップが登場したのは45年以上前の1970年のことです。オーストラリアやカリフォルニアの一部のワイナリーでは今から何十年も前に採用に踏み切ったところもあったくらいです。当時はもちろんこの斬新過ぎる?口栓が理解されることはなく、商業的には失敗しています。ですから長期熟成を経たスクリューキャップのワインは世界中のいたるところに存在します。そしてその全ての試飲結果は、スクリューキャップで封印されたワインが常に新鮮で生き生きとしており、天然コルクのものより安定した熟成度を保っていたと発表されています。スクリューキャップで栓をされたワインは二酸化硫黄化合物とアスコルビン酸(酸化を防止するビタミンC)の保持が高いため、ワインの変質、変色や酸化を大幅に遅らせることができるのです。ワインは熟成に新たな酸素を必要とせず、ワイン自体の還元酸化によって熟成をします。ですから、必要以上の酸素を供給しないスクリューキャップは熟成の度合いを正確に把握し、予想をすることができるのです。「天然コルクがワインの熟成に必要不可欠である」ということは今や神話になろうとしています。

そして何よりも、私たちを悩ませるコルク臭によるワインの汚損を100%の確立で防ぐことができること。これが最も重要なスクリューキャップの採用理由です。スクリューキャップの内側にはPVDCという食品包装用のプラスティックを使用しています。PVDCにはコルクのようにカビに汚染されることがないからです。誰もが、造り手の意のするワイン本来の品質を楽しむことができるのです。

このようなことから、今では長期熟成を必要とする赤ワインにまでスクリューキャップへの変更が進められています。そして、ワイン新興国のオーストラリア、ニュージーランドそしてカリフォルニアだけでなく、伝統的なフランスワインにまでその影響は広がっています。スクリューキャップを採用することはマーケティング上の様々なリスクを覚悟の上で、自ら造るワインの品質に100%の責任を持つことなのです。

これはシャブリの大手ネゴシアン、ミッシェル・ラロッシュ氏の発言です。

「私は、流通業者がコルク臭の問題に関心を持ってもらうように、2002年産のシャブリ・グランクリュはスクリューキャップで出荷しようと考えている。栓の機能はボトルを閉めること、ワインが外部にもれないようにし、同時に内部に悪い香りや味が混入しないようにすることだ。しかし、天然コルクは機密性が充分ではない。シャンパーニュではカーヴでの熟成に王冠を使っているが、これが最高の栓だということはよく知られている。

6年後に6本のボトルを開ければそれぞれ異なる味わいになっている。これはコルク栓がそれぞれ微妙に異なるからだ。長く寝かしたワインの中で最もよいものは常に最も若いワインだということが経験的に分かっている。これはワインの熟成の問題は酸化だということを示している。これまで様々な実験を行ってきたが、スクリューキャップには問題が一切ない。

赤ワインに関しては、ボトルでの熟成中にコルク栓を通して酸素が内部に入るようにしなくてはならないと考えられている。私はこの考えに賛成ではない。酸化による熟成が必要なのは熟成していないタンニンをしなやかにする時だ。しかし、酸化によりワインの質が退化することは間違いない。タンニンだけを酸化させることはできないのが問題だ。タンニンが充分熟していれば酸化は必要ない。ニュージーランドのある地方では30年来ワインにスクリューキャップを使っている。そして、アロマが非常によく保たれることが分かっている。

私がスクリューキャップを使うのは、質を考えての措置であって、コルク代金を節約しようというケチな考えからではないことを示すために、私は意図的にグランクリュのボトルを選んだ。スクリューキャップを使うボトルラインを既に設置し、英国向けに出荷を始めている。良い考えだと賛成してくれるソムリエもいるが、これを恐れる人たちもまだいる。しかし、今後10年でワインボトルの栓は完全に変わると思う」(WANDS誌No.74より抜粋)

もしも、毎日飲む牛乳の10本に1本がひどく匂ったり、変な味がしたら、あなたはどうしますか?・・・ワインにはそれが許されるのですか?

文:Tokyo Wine Complex事務局代表 高岡信明 [2009.06.15]

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