回を重ねるごとに盛りあがりを見せるオイスターワインコンテスト。いよいよ今年2019年は第3回を数える。

また今回は、「オイスター通こそが好む日本の牡蠣」として知る人ぞしる、兵庫県たつの市の名産「室津一年牡蠣」を産する津田宇水産株式会社が、コンテストの特別協賛として参加。

安心、安全で美味しい上に、いかにも日本らしい情緒を持つ「室津一年牡蠣」の魅力とは?

「一年牡蠣」とは、成長期間が一年未満で出荷される牡蠣のこと。

養殖牡蠣は一般的に、その成長に2〜3年を要するが、条件に恵まれた、ごく限られた産地においては1年未満でも出荷可能なサイズに成長する。室津はそうした限られた産地のひとつなのだ。

「そもそもこの地域は地形がとても入り組んでいて、室津の湾には千種、揖保の2本の川が、山からのミネラルを豊富に注ぎ込みます。その豊かな栄養によって、一年未満というわずかな生育期間でも、充分に味わいの乗った牡蠣がお届けできるのです。広島の約7mに対して、室津は1mと干満の差が小さく、深さも貝にちょうどいい。そもそも、海そのものが『貝に良い海』なのですよ。」

と、案内してくださった津田宇水産株式会社の津田侑典専務取締役。

種板に稚貝をつける「種付け」がおこなわれるのは、毎年5月。早いものは、もうその年の11月頃には出荷される。

一年牡蠣には、旬を楽しむ日本人にとって、たまらない魅力がある。

たとえば鮎好きが、春の稚鮎、初夏の若鮎、盛夏の成鮎、秋の子持ち、晩秋の落鮎と、変化する味わいを追いかけて、一年に何度も味わい尽くすように、一年牡蠣は、翌年5月の真牡蠣シーズンの終わりまで、成長過程の味わいを追いかけることができるのだ。

「11月の出立ての牡蠣は、小ぶりで新鮮な海の香りがする。2月頃になると、塩気よりもミネラルが充実してきて肉厚になり、5月のシーズン終わりの頃は、ミルキーで味わいも濃厚。それぞれの時期にそれぞれの美味しさがある。」

牡蠣は通常、2年、3年と長く養殖していると、独特の磯くささを持つようになるが、一年牡蠣にはそれがないため、「牡蠣が苦手」だった人が翻って大ファンになることもしばしばあるという。

津田字水産は牡蠣だけで年間およそ350トンの生産を誇る。日本のみならず、ロシア、中国、台湾、香港、タイなどとも取引がある、近畿地方では最大の生産者である。ゆえに、環境保全への取り組みも熱心だ。

「1年というサイクルで育てることは、環境を守ることにも繋がります。成長した牡蠣が通年で海にいると、その間ずっと大人の食欲で餌を食べ続けることになる。しかし一年牡蠣は、赤ちゃんの牡蠣が、徐々に成長していくわけですから栄養の取り方が穏やかなうえ、オフシーズンの4月〜6月は海を休めさせることができる。こうして環境を守ることが、安心・安全にも結びついていると思います。」

と津田氏。

出荷までにも、大変な手間がかかる。まずは海からあげて不純物をのぞき、個体差のあるものを間引き、また海に戻して一ヶ月。その後、さらに検査や紫外線による殺菌などがおこなわれ、ようやく出荷である。

「そもそもね、一年牡蠣は成長過程で出荷するので、身の痩せる間がない。だから、殻を開けてみたら小さくてがっかり、ということは少ないのです。しかし、殻付き牡蠣を提供する者の責任感としてね、決してお客様にそういうがっかり感を味あわせないようにと心がけています。」

加熱しても縮みにくいことも特徴のひとつ。生の時とほぼ同じサイズを維持できるため、料理に仕立てた際の見栄えも素晴らしい。

「オフシーズンには冷凍牡蠣もおすすめ。こちらはむいてあるから、一般的な飲食店やご家庭でも使いやすいですし、安心・安全のハードルもより高い。室津一年牡蠣の美味しさを、いろいろな方に楽しんでもらいたいですね。」

本年度のオイスターワインコンテストでは、室津一年牡蠣特別賞も予定されている。その動向が今から楽しみである。

※本記事は、2019年6月18日に名古屋東急ホテルで開催された「ワインコンプレックス NAGOYA 2019」会場パンフレットより転載いたしました。
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