東京ワインコンプレックス(Tokyo Wine Complex)

南半球の実力

プロフェッショナルによる、プロフェッショナルのための試飲会「南半球の実力」


 平成22年8月5日、東京青山のアイビーホールにおいて、Tokyo Wine Complex主催の試飲会「南半球の実力」が開催されました。  コストパフォーマンスに優れているばかりではなく、途轍もない実力を秘めているニューワールドの産地……それをさらに、南半球に絞って考究しようという試みです。
 参加したのは、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカのワインを扱う16社のインポーターさん。総計アイテムは、約○○点にものぼる大試飲会となりました。

さらにもう一歩踏み込んで、ニューワールドを知りたい!

 たとえば、「チリワインって美味しいんだよ!」などという言い方をします。確かに、間違いではありません。  しかし、同じく間違いではありませんが、「フランスワインって美味しいんだよ」という言い方は、しませんよね?そういう時は、「ブルゴーニュワインって、とても繊細なんだよ」とか「ボルドーワインって、味わいのバランスが良いんだよ」――などというのが、普通です。
 もちろん、いまだ知られていない産地の場合、「○○国で造られるワインは美味しい」と、まずポジティヴなイメージをもってもらうことは、大変重要です。しかし、その次の段階として、「○○国の△△地区で造られるワインは、とても◇◇だ」という、より具体的なイメージに結びつけていかなくては、ワインの認知度はいつまでもあがりません。
 今回参加した16社のインポーターさんは、損得を度外視して、「この国で造られるワインを、詳しく知ってもらいたい!」と願っている方ばかり。
 会場には、単に「果実味たっぷりで美味しい」というだけの情報ではなく、「ドコドコの地域には、マルマル特徴があって、カクカクの造り手が、シカジカのワインを造っている。こんな造りは、世界でも珍しい……」という、現地を知りぬいたひとにしか得られない情報が飛び交っていました。まさに、プロフェッショナルの社交場。お客様にも、またインポーターさんにも、熱い夏の一日となりました。

ワインで知る、ニューワールドの現在

 今年話題の南アフリカワインを扱うのは、株式会社マスダ、ジェロボーム株式会社、株式会社GSAジャパンの3社。
 株式会社マスダさんは、「美味しいのは当然として、政治的なメッセージのあるワインを届けたい」との思いで、アイテムをチョイスしているそうです。たとえば、一本買うと、自動的に恵まれない子供たちに募金されるようなシステムを導入したワインからは、アパルトヘイトを克服し、それを維持しようと頑張っている現在のアフリカの姿が窺えます。そうした思いを胸にしながらグラスを傾けるのは、また格別。「現地のメッセージを丁寧に伝えながら、ワインを販売していきたい」、それが南アフリカワインの普及に繋がります。
 株式会社GSAジャパンさんのアイテムには、「素直に美味しいと思えるワイン」という共通項があります。モノセパージュのワインに光る葡萄品種の個性は、いずれも透明感があって典型的。優れたテロワールが目に浮かぶようです。また、数種類の品種をブレンドしたアイテムからは、造り手の思いが伝わってきます。難しい薀蓄は抜きで楽しめる逸品ぞろいでした。

 ニュージーランドワインを扱うのは、株式会社ゴーディアンワインズ、カミマル株式会社、大沢興業株式会社 大沢ワインズ、アプレヴ・トレーディング株式会社、オーシャンワイン株式会社、ヴィレッジ・セラーズ株式会社、ジェロボーム株式会社の7社。  株式会社ゴーディアンワインズさんは、キウイを原料としたワインや果物のリキュールなど、スティルワイン以外にもユニークなアイテムを扱っています。ワイン通よ、邪道と軽視するなかれ。キウイワインは、まるで辛口に仕上げたソーテルヌのような味わいで、ブラインドテイスティングで原料を当てることは至難でしょう。食事とのマリアージュの幅を広げてくれる貴重な体験になりました。
 カミマル株式会社さんのアイテムで驚いたのは、なんともエレガントな、アラン・スコット・ファミリーの手になるスパークリングワイン。テロワールの特性を活かしつつ、ソーヴィニョン・ブランならではの深い味香を泡に溶け込ませた味わいはまさに絶品。運が良ければ、「プロのご意見をお聞きしたうえで、本格輸入をするか決定する」などという、レアなアイテムにめぐり合うことがあるかもしれません。
 大沢興業株式会社 大沢ワインズさんは、元々は滋賀県の不動産屋さん。山林や農地を扱ううちに、アグリカルチャーの分野に進出し、ついにはニュージーランドに畑を持ってしまったという変り種です。優れたテロワールを求めて世界中をめぐり、ついに見つけたニュージーランドの牧羊地を開墾し、一から作り上げた葡萄畑からは、繊細にしてしたたかなワインが生れます。  アプレヴ・トレーディング株式会社さんのおすすめは、シラーやマルベックなどを用いた、濃厚な赤ワイン。ニュージーランドというと、ソーヴィニョン・ブランやピノ・ノワールなど、繊細系の葡萄品種を思い浮かべがちですが、あまり日本に紹介されていないだけで、以前からシラーやメルローを使った「濃厚な赤ワイン」も造られているそうです。ことにマルベックは、アルゼンチンなど南アメリカの醸造家との交流から生れたニューウェーブ。まさに、現地の最新情報ワインです。
 ヴィレッジ・セラーズ株式会社さんのブースでは、ホークス・ベイ産の素晴らしいピノ・グリに出会いました。果実味が全面に押し出された「よくあるニューワールドワイン」とは一線を画す格調の高さ。今回の試飲会にヴィレッジ・セラーズ株式会社さんが持ってきたアイテムは、1000〜2000円代がメインだそうですが、しかし、いずれも予想を大きく上回るクオリティの高さでした。  オーシャンワイン株式会社さんの扱うニュージーランドのソーヴィニョン・ブランやリースリングは、フレンチやイタリアンのレストランにおいて、とても重宝されているとか。コストパフォーマンスの高さはいうまでもありませんが、その繊細華麗な味わいが、最近流行りの素材感を活かしたフレンチやイタリアンには、むしろベストマッチするのだそうです。「抜栓しても、すぐにはへこたれないワインの底力が、グラスで販売する際には大きなメリットになります」、とのことです。

 オーストラリアワインを扱っているのは、株式会社ゴーディアンワインズ、株式会社kpオーチャード、わいん蔵・南十字星、ヴィレッジ・セラーズ株式会社、ジェロボーム株式会社、株式会社神酒連、有限会社ザ・ヴァインの7社。
 株式会社kpオーチャードさんは、バロッサヴァレーやヤラヴァレーなど、いくつもの産地と取引があります。「畑の近くに沢がありましてね。小さな蛙がたくさん住んでいるんです……」などと、まるで目に浮かぶようにテロワールからミクロクリマまで、詳しく解説してくれる丁寧な対応が、とても印象的でした。「インポーターさんのお話しが聞けたので、お客さんにより深くワインの説明ができる」と、来場していたソムリエさんも絶賛です。
 わいん蔵・南十字星さんのおすすめは、北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ特有の葡萄ラグレイン種を使ったワイン。「とにかく造り手が変わり者。トレンティーノ・アルト・アディジェでだって、ラグレインなんて品種を使ったワインは珍しいというのに、オーストラリアでは尚更でしょう?でも、こういう変わり者がワインを造れる環境が、オーストラリアには整っているんですよ」。珍しいワインを探しているひとには、打って付けの一本でしょう。
 ジェロボーム株式会社さんは、西オーストラリア州の話題の産地、マーガレットリバー産のソーヴィニョン・ブラン&セミヨン、シャルドネ、カベルネ&メルローなどを扱っています。マーガレットリバーは、プレミアムワインの産地となり得る条件を整えた土地を探していたふたつの調査チームが、別々に同じ答えを出した「約束の土地」。80年代頃からユニークな造り手がさかんに入植し、妍を競っています。
 株式会社神酒連さんは、神奈川県を中心に9つの支店や営業所を展開するインポーターさん。もともとは、日本酒や焼酎などを扱う酒屋さんだそうですが、ワインはオーストラリアに特化して輸入しているそうです。神酒連さんの影響で、日本酒党から宗旨替えしたドリンカーも少なくないとか。「今回の試飲会では、シラーズなど特に濃厚な赤ワインを取り揃えてみました。ヘビーユーザーほど、濃厚な赤に向かう傾向がありますね」、とのことです。
 有限会社ザ・ヴァインさんのおすすめは、ヴィクトリア州ビーチワース産、ソレンバーグの手になるガメイ2008です。イギリスを代表するワイン評論家で、英国王室のワインセラーにも影響力があるといわれるジャンシス・ロビンソン氏が、「私はこのワインがガメイから造られたことを知っているけれど、しかしあえて、ブルゴーニュのピノ・ノワールから造られたグラン・クリュとして評価したい!」と絶賛した逸品です。

チリワインを扱うのは、コーケン香料株式会社、ユヤイ・カパック・アルパ有限会社、株式会社新井清太郎商店の3社です。 コーケン香料株式会社さんのおすすめは、カサブランカヴァレー産のソーヴィニョン・ブランとピノ・ノワール。カサブランカヴァレーは、「霧のカサブランカ」と呼ばれるほど、午前中は必ず濃い霧に包まれる土地。不思議なことに午後になると、霧はすっかり晴れわたり、太陽が輝きます。この寒暖の差が、極めて繊細な味わいを育む、チリでも指折りの名産地です。
チリの産地に詳しいといえば、ユヤイ・カパック・アルパ有限会社さんでしょう。創業者の和田さんは、お父様の仕事の都合で南米に生まれ、高校生になるまで現地で育った経歴をお持ちです。インポーターをはじめる際には、チリで最高と讃えられるカトリカ大学の醸造コースに入学して基礎を学んでおられるので、クエスチョンに対するアンサーは、専門家以上といって過言ではありません。
株式会社新井清太郎商店さんが扱うヴィーニャ・アラス・デ・ピルケは、ワイナリーであると同時に、1892年からの伝統を誇る、チリで最も歴史ある競走馬の生産牧場です。競走馬の飼育は、セレブリティーの最高贅沢のひとつとされています。それに等しい精神性で臨むワイン造りからは、いうまでもなく極上のワインが生み出されます。

 ざっと眺覧しただけでも、「南半球の実力」は、これだけのバラエティーに富んだ、充実の試飲会でした。今回、参加対象となったのは、酒販店やレストラン関係者などプロフェッショナルの方たちばかりでしたが、それだけにレアなアイテムや貴重な情報満載の、まさにプロが喜ぶ試飲会となりました。

文:東京ワインコンプレックス事務局[2010.08.10]

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